「サイトのアクセス解析をはじめよう!」レジュメ公開+おまけの解説

記事を書くたんびに「「更新してない記録」の最長不倒記録更新」を誇るサイトになりつつありますが、先日ちょっと依頼されてお話したテーマをもとにエントリを一本。

サイト作ったはいいけど、ぶっちゃけアクセスが来ておるのか、っていうかその後どうなっておるんだね君、次週の会議で説明するように …というざっくばらん(笑)な上司を持つ方向け、基本のキ、です。

アクセス解析の用語とか、ツールの使い方とかに関する情報はほぼゼロです。そういうのはウチでは扱っておりませんので他所を当たってください。(キリッ)

【レジュメ】
●「アクセス解析」をはじめる前に
・アクセス解析でできること・できないこと
・何を知り・何を変えたいのか?

●管理画面に行く前にやっておくべきこと
・「検索キーワード」を頭に入れておく
ex. 東京大学出版会なら→ 「東大出版会」「内田民法」「東大英単」「東大人気講座」
法政大学出版局なら→「ものと人間の文化史」
大阪大学出版会なら→「下痢の本」etc.
・Google検索の進化した機能を活用する

●最低限アタマに入れておきたい2つの数字
・PV(ページビュー)
・直帰率

●押さえておきたい2つの要素
・検索キーワード
・参照元サイト

で、以下、ちょこっと解説。

●「アクセス解析」をはじめる前に

・アクセス解析でできること・できないこと

「サイトのアクセス解析」の情報はwebに大量にあります。入門本、は本屋さんに行くと山のようにあります。サイト担当者としては、「こういうスキルを身につけないといけないのか……」と溜息をついたり、あるいは積極的な人は「こういうスキルを身につけて、サイトのエキスパートになるぞ☆」と意気込んだりしているかもしれません。

しかし。

残念ながら、アクセス解析でできることはごくごくわずかです(たしかに、情報を発信してそれを定量的に測定できる仕組みがものすごく簡単に実現でるようになったことは、ここ100年の歴史を振り返れば実に画期的なことなのですが)。

そもそも「(サイトの)アクセス解析」という言葉が人口に膾炙するようになったのは、管理者のメンテナンス作業に過ぎなかったapacheのログを読む、という行為が(好事家の間で)一般化し、それについてのツールがもりもり出始めた時期とだいたい一致しています。つまり、「なんか記録が残っているから、それを見易く加工しよう」という発想から始まっているハナシにすぎないのです。「○○したい!」という強烈なニーズがあって、それに対応する道具が作られた、という順番ではないのです。

その後、JavaScript利用の常態化・ブログ的・CMS的なサイト構築の一般化とGoogle Analyticsにトドメを刺す、フリーアクセスツール百花繚乱の後押しもあって、「タグ貼り型」ツールが、かなりニーズ寄りの集計結果を出すようになったわけですが、今度は機能がありすぎて、非常にとっつきにくいものになっています。その割には、アクセス解析を知ると、売り上げがばんばん増えたり、人気のサイトになったりするらしい、という情報だけはどんどん入ってきます。これは困った。

というわけで、原点に戻りましょう。

・何を知り・何を変えたいのか?

ちゃんとした企業のちゃんとした経営者(あるいは責任者)といえども、意外にこの質問にきっちり答えられるところがないんですねー。

なぜか。

この質問に対する回答はほぼ一択です。

「サイトで何ができるかわかっていないから」

これに尽きます。そして、「何ができるかわからない」→「なにもしない」→「なにかしないと!」→「でも対処がわからない」という無限ループに入って、「まあサイトでは大したことはまだできなさそうだからいいや」で放置、となります(まあ、サイトに限ったことではないんですけどね……)。

というわけで、「何を知り・何を変えたいのか?」についての、自分なり(その企業なり)の回答がないうちは、やみくもに行動を起こしてもあんまり成果は出ないでしょう。

……といっても、弊社は主に出版社、およびその関連の会社・団体が主な顧客ですので、そこら辺をターゲットにした、最大公約数的な課題を掲げておきます。それは、

「自社(の活動)・および自社商品(まあ、本、ですね)の情報を顧客および潜在顧客に広く知らせ、同時に彼ら(主に読者)が自社・および自社商品についてどのような意見・感想・希望を持っているか、情報収集する」

です。「同時に」がポイントです。では、能書きを垂れて多少満足したので具体的な話に進みます。

●管理画面に行く前にやっておくべきこと

・「検索キーワード」を頭に入れておく

サイトの世界では、閲覧者の行動の99%は「言葉(テキスト)の入力(あるいはテキストのクリック)」によって決定しています(「音声」は結構いい所まで来ていますが、「身振り」や「嗅覚」、「ユーザーの身なり」などで情報の流れが変化するようになるには、まだもう少し時間がかかるでしょう)。

そうなると、閲覧者とサイトをつなぐ、最も有力な「道」は「コトバ」である、というシンプルな話になります。もっと限定して言うと、「検索エンジンに入力するキーワード」となります。

自社の名前、は当然、ですが、自社の有力商品の書名、著者名、得意ジャンル……。まともな営業マインドを持っている人なら当然とは思いますが、想定ユーザーを脳内プロファイリングして、こういったキーワードをあらかじめアタマの中に入れておかないことには、解析結果を眺めてもこれ、といった道筋は見えてこないでしょう。かならず、この準備運動を終えてから、アクセス解析に取りかかってください。

ちなみにこの準備運動は、脳内でやるだけではなく、実際に検索エンジンに単語を入力しながらやった方が効果的です。以下はレジュメに書いた、ごくごく一例です。

ex. 東京大学出版会なら→ 「東大出版会」「内田民法」「東大英単」「東大人気講座」
法政大学出版局なら→「ものと人間の文化史」
大阪大学出版会なら→「下痢の本」etc.

・Google検索の進化した機能を活用する

これは本来ならば稿を改めた方が良さそうなテーマなんですが、まあ、流行りモノなので一応入れておきました。たしか、今年の春頃だったと思いますが、Googleが長年こだわってきた2カラム構造をやめ、3カラム構造に変えました。この改定により、画面左にいくつかメニューが新設されましたが、ここの機能を使いましょう、という話です。

「もっと見る」という所をクリックすると、「画像」「動画」「ニュース」……とメニューが現われます。ここの、「アップデート」をクリックすると、(今のところ)twitterでの検索結果に絞り込んで表示されます。自社でそれなりに鮮度の高い情報を出した場合、この部分はほぼ即時に結果が見られるので、なかなか興味深い結果が得られることがあります。相当ニッチな情報であっても、自社でtwitterをやる等、すでにコミュニティが出来ている場合は、そういう層の反応がダイレクトに見える、という意味でも重要な指標になります。

twitterを使ったマーケティングやその解析はこれから必須になっていくと思われますが、こういったこと一つとっても、(狭義の)アクセス解析はサイト改善のための単なる一要素に過ぎない、逆に言うと、目的と問題意識さえはっきりしていれば、新技術やネットの流行おそるるに足らず、ということがおわかりいただけるかと思います。

●最低限アタマに入れておきたい2つの数字

ここまで来たら、なんらかの解析ツールを導入したり、あるいはすでにあるレポートを見たりする際も、目のつけどころが変わってくると思います。その上で、最低限、これだけは見ておくべき数字、というのをふたつだけ上げておきます。

・PV(ページビュー)
PV = Page Viewです。あるurlを入力して、ブラウザが表示をひとつ返してきたら、それが1PV、です。「ディレクトリごと」「ブラウザ(UserAgent)ごと」「曜日ごと」などとこまごま分かれている場合がありますが、自社サイトの構造がすみずみまでアタマに入っているような人はこの記事を読んでいないと思うので、ここではざっくり、「毎週(あるいは毎月)、自社全体でおよそ何PV」という数字だけ覚えるようにしてください。
・直帰率
やっとアクセス解析っぽい専門用語が出てきました。サイトに来たものの、一ページだけ見て終了(ブラウザを閉じてしまった、ほかのサイトに移動してしまった etc.)してしまった率、を意味します。

この二つから、何がわかるか。「ネットにおける、自社サイトの「大きさ」」と、「深さ」です。

「大きさ」は「何ページあるのか」と「どれくらい影響力があるのか」の二つに依存するわけですが、ここでは数字をアタマに入れておくことによって、急に変動したらそれに気づける程度、を目標にしましょう。

では、深さ、とは何か。たとえば、自社で「ちくわぶ」についての本(しかもなかなか売れ行き好調)を出版しているとして、その本の紹介ページが「書名・著者名・価格」で終わっていたとしたらどうでしょう。読者がGoogleで「ちくわぶのすべて ○○出版」と入力して、そのページに辿りついたとして、それは果たして読者の求めているページでしょうか。恐らく、読者はそのページを閉じてしまうでしょう(まあそもそも、そんなお粗末なページであれば上位表示はなかなか難しいんですが、残念ながら「自社商品のページ」というのは相当上の方に表示されてしまうので、この問題にむしろ気づきにくいんですね〜)。

「ちくわぶのすべて ○○出版」で検索してきた人には、

・その本の(できれば、オンライン書店にも載っていないような)詳細な内容
・関連書の「世界のおでんだね百選」「高品質グルテンの製法と工程管理」へのリンク
・著者のプロフィール紹介および著書へのリンク
・購入先へのリンク

最低、これくらいは提供してもバチはあたらないでしょう。そして、「リンク」が自社内のものであれば、これはサイト内の回遊、となります。そう、「直帰率」が下がるのです。

●押さえておきたい2つの要素

あともう2つ、見ておきたい要素を挙げます。

・検索キーワード

閲覧者が、「どういう言葉」で自社サイトに辿りついたか、という解析結果です。前述の、「アタマに入れた」方の検索キーワードと、「解析結果」の検索キーワードを比べてみて、どれくらい想像と違ったか、を検証してください。あまりにも大きくズレているようでしたら、色んな意味で要注意、です。

わりと簡単にできる具体的な検証→改善プロセスとしては、たとえば、
・「長期品切れ本」の「糸コンニャク入門」へのアクセスが多い→ニーズが高いのでは?という仮説が成り立つ
・「おでんだね」というキーワードによるアクセスがほとんどない→「ちくわぶのすべて」の紹介ページに、「おでんだね」(あるいは関連しそうなキーワード)という単語は十分に入っているか?
といったことがある、かもしれません。

ちょっと脱線しますが、品切れだったりで市場に希少な本へのアクセスは見かけ上、多くなりすぎる傾向はあります。しかし、そもそも、その本についての情報が載っているページがなければ、アクセスもない→ニーズに気付けない、ということにもご注意ください。情報を公開する、と同時に情報収集する、というのは要はそういうことです。

・参照元サイト

あと、ひとつだけ。アクセス解析では、単なる数値だけではなく、「経路」自体を解析することもできます。そのひとつが、「どこから、自社サイトに来たのか?」という要素です。

ほとんどは、「検索エンジン」からになるわけですが、まれに「非常に影響力のあるサイト」でリンクつきで紹介され、アクセスが増える、という現象があります。多くは一時的なものですが、書籍のように専門性が高いものの場合、この、「影響力」については注意深く吟味する必要があります。

たとえば、そのサイトがある研究者のサイトである場合、

・その人は自社の書籍の「熱心な読者」である
・自社の著者となってくれる
・そのサイトからたどれるサイトにおいても、同様

…といった可能性が高い、ということが言えます(ある出版社では、こういったサイトを発見した場合は継続的にウォッチし、時にはその人がいかにも反応しそうな情報を自社サイトに出す、といったこともしているそうです)。

結局のところ、「良い」サイトを維持している会社を見ていると、情報を出し、適切なクラスタにそれを届け、情報をぶつけた反応を見てまた情報を出す、というたゆまぬ作業の繰り返しがすべてだなあ、と感じます。この、「反応を見る」というステップの一助として、「アクセス解析」という技術がある、くらいに考えておくのが精神衛生上よろしいのではないか、と思います。

と、まあ、だいたいこんなことを話しました。もう少し詳しく知りたい、という向きは弊社まで御一報を。

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日高崇